【統計検定1級対策】ポアソン分布の積率母関数・期待値・分散の導出
目次
前書き
ポアソン分布は先日紹介した二項分布で平均$np$を一定の値$\lambda$として、$n\rightarrow\infty$としたときになる分布です。 使いどころとしては。平均3回/時間来るバス停の一時間に来るバスの台数を確率変数と見たときそれが従う分布です。
それでは詳細に見ていきましょう。
初めに結論
項目 | 値 |
---|---|
台 | $x\in \mathbb{N}\cup set(0)$1 |
確率関数 | $P(X=x;\lambda)=e^{-\lambda}\frac{\lambda^x}{x!}$ |
積率母関数 | $e^{\lambda(e^t-1)}$ |
平均 | $\lambda$ |
分散 | $\lambda$ |
導出
確率関数を二項分布から導出
二項分布$B(n,p)$において期待値$np$を一定の値$\lambda$に保ちながら$n\rightarrow\infty$とすることでポアソン分布は導出されます。
$$
\begin{eqnarray}
P(X=x)&=&\binom{n}{x}p^x(1-p)^{n-x}=\frac{n!}{x!(n-x)!}p^x(1-p)^{n-x}\\\
&=&\frac{\lambda^x}{x!}\frac{n(n-1)\cdots(n-(x-1))(n-x)!}{(n-x)!}\frac{1}{n^x}\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^n\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^{-x}\\\
&=&\frac{\lambda^x}{x!}\frac{\overbrace{n(n-1)\cdots(n-(x-1))}^{x}}{n^x}\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^n\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^{-x}\\\
&=&\frac{\lambda^x}{x!}1\left(1-\frac1n\right)\cdots\left(1-\frac{x-1}{n}\right)\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^n\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^{-x}\\\
&=&\frac{\lambda^x}{x!}1\left(1-\frac1n\right)\cdots\left(1-\frac{x-1}{n}\right)\left(\left(1+\left(-\frac{\lambda}{n}\right)\right)^{-\frac{n}{\lambda}}\right)^{-\lambda}\left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^{-x}\\\
&\to&e^{-\lambda}\frac{\lambda^x}{x!}\quad(n\to\infty)
\end{eqnarray}
$$
ちょっと複雑に見えますがやっていること一つ一つは簡単です。
- 第三式から第四式: $n!$を$(n-x)!$で約分したいのでちょっと書き下す
- 第四式から第五式: $(n-x)!$で約分
- 第五式から第六式: 約分で残った分子$n(n-1)\cdots(n-(x-1))$は$x$個の積、隣の分母だった$n^x$も$x$個の積なのでそれぞれ$n$で割る
- 第六式から第七式: $(1-\lambda/n)^n$を高校数学でやった自然対数の極限の形へ変形
と式変形してあげるだけで、最後は極限$n\to\infty$を実施するだけです。
積率母関数
導出の途中で$e^x$のマクローリン展開を利用します。
$$
\begin{eqnarray}
M_X(t)&=&E(e^{tX})=
\sum_{x=0}^{\infty}e^{tx}e^{-\lambda}\frac{\lambda^x}{x!}
=e^{-\lambda}\sum_{x=0}^{\infty}\frac{(e^t\lambda)^x}{x!}\\\
&=&e^{-\lambda}e^{\lambda e^t}
=e^{\lambda(e^t-1)}
\end{eqnarray}
$$
第三式から第四式は$x$に関係ない項をシグマの外に出し$x$乗である者同士をまとめてあげただけです。 第四式から第五式はマクローリン展開$e^x=1+\frac{1}{1!}x+\frac{1}{2!}x^2\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^k}{k!}$を$x=e^t\lambda$として利用してあげました。
平均
先に求めた積率母関数を微分して$t=0$として求めましょう。
$$ \begin{eqnarray} E(X)&=&\left.\frac{d}{dt}e^{\lambda(e^t-1)}\right|_{t=0} =\left.\lambda e^te^{\lambda(e^t-1)}\right|_{t=0}=\lambda \end{eqnarray} $$
分散
分散は$E(X^2)-(E(X))^2$で求めることができますので、二次のモーメントを求めましょう。
$$
\begin{eqnarray}
E(X^2)&=&\left.\frac{d^2}{dt^2}M_X(t)\right|_{t=0}
=\left.\frac{d}{dt}\lambda e^te^{\lambda(e^t-1)}\right|_{t=0}\\\
&=&\left.\lambda e^te^{\lambda(e^t-1)}+\lambda^2e^{2t}e^{\lambda(e^t-1)}\right|_{t=0}
=\lambda+\lambda^2
\end{eqnarray}
$$
分散を求めましょう。 $$ \begin{eqnarray} V(X)=E(X^2)-(E(X))^2 =\lambda+\lambda^2-(\lambda)^2 =\lambda \end{eqnarray} $$
まとめ
ポアソン分布の二項分布からの導出は慣れれば簡単ですが、初めてだと色々式変形するので手強く感じるかもしれません。 が、それはみんなどんな式を見ても感じるごく普通のことです、私自身も導出するまでには時間を費やしました。 しつこく式変形する意味をしっかり考えてあげることが数学の醍醐味ですので、拒絶しないで楽しんでみてください。 しつこく数学していると急に夏の仕事上がりに飲む成人が大好きな黄金炭酸水のように、式変形や導出の意味が染み渡ってきます。 この感覚を楽しんでくださいw最近熱いし黄金炭酸水飲みたくなりましたね。
それではこの記事が誰かの役に立つ、数学や統計が楽しいと思うきっかけになることを願いまして本日もこのあたりで失礼します。
参考文献
- 日本統計学会編, “日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学”, 第6刷, 2013, 東京図書, ISBN 978-4-489-02150-3.
- 藤澤洋徳, “確率と統計”, 第9刷, 2006, 朝倉書店, ISBN 978-4-254-11763-9.
- 小寺平治, “明解演習 数理統計”, 初版30刷, 1986, 共立出版, ISBN 978-4-320-01381-0.
-
集合の
\{ \}
がうまく出力されないためset()で本ブログは記載することにしています。 ↩︎