【統計検定1級対策】負の二項分布の積率母関数・期待値・分散の導出
目次
前書き
負の二項分布は先日紹介した幾何分布の一般化です。つまり無限に続くベルヌーイ試行で$r$回成功する(本によっては失敗すると定義しているものもある)までの失敗の回数を確率変数としたときに従う分布です。
そのため確率分布は幾何分布と同じように考えてあげればいいだけです。
それでは詳細に見ていきましょう。
初めに結論
項目 | 値 |
---|---|
台 | $x\in \mathbb{N}\cup set(0)$1 |
確率関数 | $P(X=x;r,p)=\binom{x+r-1}{x}p^r(1-p)^x$ |
積率母関数 | $\left(\frac{p}{1-e^t(1-p)}\right)^r$ |
平均 | $r\frac{1-p}{p}$ |
分散 | $r\frac{1-p}{p^2}$ |
導出
積率母関数
積率母関数の導出では先日紹介した一般化二項定理を利用します。 それでは実際に求めていきましょう。
$$
\begin{eqnarray}
M_X(t)&=&E(e^{tX})=\sum_{x=0}^{\infty}e^{tx}\binom{x+r-1}{x}p^r(1-p)^x\\\
&=&p^r\sum_{x=0}^{\infty}\binom{x+r-1}{x}(e^t(1-p))^x\\\
&=&p^r(1-e^t(1-p))^{-r}=\left(\frac{p}{1-e^t(1-p)}\right)^r
\end{eqnarray}
$$
第三式から第四式は$x$に関係ない$p^r$をシグマの外に出し、$x$乗であるものをまとめてあげただけです。この第四式を見て一般化二項定理と気付ければおしまいですね。
平均
先に求めた積率母関数を微分して$t=0$として求めましょう。
$$
\begin{eqnarray}
E(X)&=&\left.\frac{d}{dt}M_X(t)\right|_{t=0}=\left.\frac{d}{dt}\left(\frac{p}{1-e^t(1-p)}\right)^r\right|_{t=0}\\\
&=&\left.r\left(\frac{p}{1-e^t(1-p)}\right)^{r-1}\frac{-p(-(1-p)e^t)}{(1-e^t(1-p))^2}\right|_{t=0}\\\
&=&\left.rp^r(1-p)\frac{e^t}{(1-e^t(1-p))^{r+1}}\right|_{t=0}=rp^r(1-p)\frac{1}{p^{r+1}}\\\
&=&r\frac{1-p}{p}
\end{eqnarray}
$$
第三式から第四式は計算ミスしないように気をつけながら商の微分・合成関数の微分・指数関数の微分を施します、第五式では次の二次のモーメントのために一旦キレイにまとめなおしただけです(期末試験や統計検定で二次微分を求めないのなくていい場合はわざわざまとめずに$t=0$を代入しちゃってください)。あとは代入して丁寧に約分をしてあげれば完成です。
分散
分散は$E(X^2)-(E(X))^2$で求めることができますので、二次のモーメントを求めましょう。
$$
\begin{eqnarray}
E(X^2)&=&\left.\frac{d^2}{dt^2}M_X(t)\right|_{t=0}=\left.\frac{d}{dt}rp^r(1-p)\frac{e^t}{(1-e^t(1-p))^{r+1}}\right|_{t=0}\\\
&=&\left.rp^r(1-p)\frac{e^t(1-e^t(1-p))^{r+1}-e^t(r+1)(1-e^t(1-p))^r(-(1-p)e^t)}{(1-e^t(1-p))^{2r+2}}\right|_{t=0}\\\
&=&rp^r(1-p)\frac{p+(r+1)(1-p)}{p^{r+2}}=\frac{r(1-p)(p+(r+1)(1-p))}{p^2}
\end{eqnarray}
$$
まぁ計算がめんどくさいw
第三式は一次微分をもう一回微分するということを表しているだけです。
第四式のここで計算ミスしないことが勝負の分かれ目ですね、丁寧に商の微分・合成関数の微分・指数関数の微分を実施してあげます。あとは$t=0$を代入してきれいにしてあげるだけです。
分散を求めましょう。
$$
\begin{eqnarray}
V(X)&=&E(X^2)-(E(X))^2\\\
&=&\frac{r(1-p)(p+(r+1)(1-p))}{p^2}-\left(r\frac{1-p}{p}\right)^2=r\frac{1-p}{p^2}
\end{eqnarray}
$$
丁寧に分数の計算を進めれば導出完了です。
まとめ
成功の回数が$1$回ではなく、$r$回に拡張された(一般化した)だけですので積率母関数も期待値・分散もそっくりですね。 面白い部分とすれば積率母関数を導出する時に一般化二項定理を使う部分ですね、この部分私自身気が付くのにとても時間がかかりました。
毎度同じことを記載していますが、理解できたと思ったら一回何も見ずにイチから自力で証明できるか確認してみてください、私は理解したと思っていましたが意外とイチから最後までちゃんと証明できたのは何回目だったかというほどでした。 人間って賢いので聞いただけで何となく理解はできちゃうんですよね、でもすぐ忘れちゃう生き物なので式の流れや必然性を考えながら反復して練習しておくのが大切ですね。
それではこのブログが統計を学んでいる方や統計検定1級取得を目指している方に少しでも情報提供になれること、このブログを通して数学・統計学を面白いと思っていただけることを願いまして本日もこのあたりで失礼します。
参考文献
- 日本統計学会編, “日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学”, 第6刷, 2013, 東京図書, ISBN 978-4-489-02150-3.
- 藤澤洋徳, “確率と統計”, 第9刷, 2006, 朝倉書店, ISBN 978-4-254-11763-9.
- 小寺平治, “明解演習 数理統計”, 初版30刷, 1986, 共立出版, ISBN 978-4-320-01381-0.
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集合の
\{ \}
がうまく出力されないためset()で本ブログは記載することにしています。 ↩︎