by nkoda

【統計検定1級対策】ワイブル分布の期待値・分散の導出

目次

前書き

 本日はワイブル分布に関して紹介いたします。 これは先日紹介しました指数分布の亜種の分布ですね。 何が違ったかといいますと、危険率$r(x)$が一定ではなく、$r(x)=cx^b$($b,c$は正定数)であるということです。 危険率は$f(x),F(x)$をそれぞれ確率密度関数、累積密度関数としたときに$r(x)=\frac{f(x)}{1-F(X)}$が定義でしたので、初期条件$F(x)=0$として微分方程式を解くことで累積密度関数を導出できます。 実際にやってみましょう。

$$ \begin{eqnarray} \frac{d}{dx}\log{\left(1-F(x)\right)}&=&-cx^b\\\
\log{(1-F(x))}&=&-\frac{c}{b+1}x^{b+1}+A\quad \mbox{A is Integration constant}\\\
1-F(x)&=&\exp{\left(-\frac{c}{b+1}x^{b+1}+A\right)} \end{eqnarray} $$

ここで初期条件$F(x)=0$より$1=e^A\Rightarrow A=0$なので、 $$F(x)=1-\exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}.$$

辺々$x$で微分してあげれば確率密度関数が$cx^b \exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}$であることが分かりますね。

 それではいつものように結論を見て導出の詳細を見ていきましょう。

初めに結論

きれいに見えるように$\kappa=(b+1)^{-1},m=\left(\frac{b+1}{c}\right)^{\kappa}$とすることにします。

項目
$x\in \mathbb{R}_{>0} $
確率関数 $f(x;b,c)=cx^b \exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}$
積率母関数 きれいな形で求まらない
平均 $m\Gamma(1+\kappa)$
分散 $m^2(\Gamma(1+2\kappa)-\Gamma^2(1+\kappa))$

導出

積率母関数

 きれいな形で求まらない認識です、もし間違っていたら問い合わせフォームからご指摘よろしくお願いいたします。

平均

 定義通りに計算していきます。

$$ \begin{eqnarray} E(X)&=&\int_{0}^{\infty}xcx^b \exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}dx\\\
&=&c\int_{0}^{\infty}x^{b+1} \exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}dx\\\
&=&c\int_{0}^{\infty}t\exp{\left(-\frac{c}{b+1}t\right)}\frac{1}{b+1}t^{\frac{1}{b+1}-1}dt\\\
&=&\frac{c}{b+1}\int_{0}^{\infty}t^{\frac{1}{b+1}}\exp{\left(-\frac{c}{b+1}t\right)}dt\\\
&=&\frac{c}{b+1}\frac{\Gamma(\kappa+1)}{\left(\frac{c}{b+1}\right)^{\kappa+1}}\quad\mbox{where, }\kappa=\frac{1}{b+1}\\\
&=&\left(\frac{b+1}{c}\right)^{\kappa}\Gamma(\kappa+1)\\\
&=&m\Gamma(\kappa+1)\quad \mbox{where, }m=\left(\frac{b+1}{c}\right)^{\kappa} \end{eqnarray} $$

 式変形について説明していきましょう。 第三式から第四式で置換をしました。 $t=x^{b+1}$とすると、$x=t^{\frac{1}{b+1}}$なので$\frac{dx}{dt}=\frac{1}{b+1}t^{\frac{1}{b+1}-1}$であることを利用しています。 この置換のモチベーションはもうお分かりかと思いますがガンマ関数の形が見えるからですね。

分散

 分散は$E(X^2)-(E(X))^2$で求めることができますので、二次のモーメントを定義通り求めます。 期待値の導出を利用できるため、期待値の時の形を作りきれいに求めていきます。

$$ \begin{eqnarray} E(X^2)&=&\int_{0}^{\infty}x^2cx^b \exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}dx\\\
&=&c\int_{0}^{\infty}xx^{b+1} \exp{\left(-\frac{cx^{b+1}}{b+1}\right)}dx\\\
&=&c\int_{0}^{\infty}t^{\frac{1}{b+1}}t\exp{\left(-\frac{c}{b+1}t\right)}\frac{1}{b+1}t^{\frac{1}{b+1}-1}dt\\\
&=&\frac{c}{b+1}\int_{0}^{\infty}t^{\frac{2}{b+1}}\exp{\left(-\frac{c}{b+1}t\right)}dt\\\
&=&\frac{c}{b+1}\frac{\Gamma(2\kappa+1)}{\left(\frac{c}{b+1}\right)^{2\kappa+1}}\quad\mbox{where, }\kappa=\frac{1}{b+1}\\\
&=&\left(\frac{b+1}{c}\right)^{2\kappa}\Gamma(2\kappa+1)\\\
&=&m^2\Gamma(2\kappa+1)\quad \mbox{where, }m=\left(\frac{b+1}{c}\right)^{\kappa} \end{eqnarray} $$

なので分散は、 $$ \begin{eqnarray} V(X)&=&m^2\Gamma(2\kappa+1)-\left(m\Gamma(\kappa+1)\right)^2\\\
&=&m^2\left(\Gamma(2\kappa+1)-\Gamma^2(\kappa+1)\right) \end{eqnarray} $$

まとめ

 先日紹介しましたガンマ関数とベータ関数でも触れました通り、またガンマ関数が出てきましたね。 統計検定一級で使用する分布はガンマ関数やベータ関数がたくさん隠れています、今後もガンマ関数やベータ関数の形が出てきますのでアンテナ張っておきましょう。 今回のように置換してあげないとガンマ関数の形にならないものもありますが、そもそも$xe^{-ax}$みたいな形が出たらガンマ関数に持っていけないかなぁと思えるようになれば感覚が研ぎ澄まされてきていると思います。

 それでは、統計検定1級を目指されている方や統計を勉強している方に良い情報提供となることを願って本日は失礼します。

参考文献

  • 日本統計学会編, “日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学”, 第6刷, 2013, 東京図書, ISBN 978-4-489-02150-3.
  • 小寺平治, “明解演習 数理統計”, 初版30刷, 1986, 共立出版, ISBN 978-4-320-01381-0.