【統計検定1級対策】一般化二項定理
目次
前書き
今回のエントリーは次回紹介する負の二項分布で使う一般化二項定理について紹介しようと思います。 とてもワクワクするのでぜひ楽しんでいってください。 負の二項定理は先日紹介した幾何分布の一般化したものとなります。
準備
一般化二項定理では原点付近のテイラー展開(いわゆるマクローリン展開)を使用します。
まずはテイラー展開について紹介します。
テイラー展開は大学数学では「またかいっ!」ってくらい出会うのでこのタイミングでしっかり理解してしまいましょう。
テイラー展開を雑に説明しますと、「ある関数をある一点$a$とその点における微分係数を使って級数で表現できる」ということです。
任意の関数全てができるわけではないですし、本当にできるんだっけの判定はテイラーの剰余項が$0$に収束するかをみたり、どれくらい遠くまでちゃんと近似できるかは収束半径を計算したりとやることがたくさんありますが、今回は何となく結果だけを理解しましょう。ちゃんと厳密な証明は他の参考書やblog記事を漁ってみてください。
前置きが長くなりましたが結果は下記のとおりです。
$$
f(x)=\sum_{i=0}^{\infty}\frac{f^{(i)}(a)}{i!}(x-a)^i=f(a)+\frac{f’(a)}{1!}(x-a)+\frac{f’'(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots
$$
マクローリン展開はテイラー展開で$a=0$とすればいいので
$$
f(x)=\sum_{i=0}^{\infty}\frac{f^{(i)}(0)}{i!}x^i=f(0)+\frac{f’(0)}{1!}x+\frac{f’'(0)}{2!}x^2+\cdots
$$
となります。
本題
一般化二項定理
まず$f(x)=(1-x)^{-r}$とします、ちょっと形が特殊に見えますが頑張れば二項定理がつかえそうな式ですね。これをマクローリン展開しましょう。
まずは導関数$f^{(i)}(x)$を求めて$x=0$としてあげます。
$$
\begin{eqnarray}
(\forall i\in\mathbb{N})[f^{(i)}(x)&=&r(r+1)\cdots(r+i-1)(1-x)^{-(r+i)}]
\end{eqnarray}
$$
これは丁寧に高校数学の微分法で習うことをやってあげれば分かります。ここで$x=0$としてみましょう、
$$
\begin{eqnarray}
(\forall i\in\mathbb{N})[f^{(i)}(0)&=&r(r+1)\cdots(r+i-1)=\frac{(i+r-1)!}{(r-1)!}]
\end{eqnarray}
$$
きれいに係数の部分だけが残りましたね、最後の式変形は無理やり階乗のみで表現してあげただけです。
ここまでくれば$f(x)=(1-x)^{-r}$のマクローリン展開を求められますね。
$$
\begin{eqnarray}
f(x)&=&(1-x)^{-r}=\sum_{i=0}^{\infty}\frac{f^{(i)}(0)}{i!}x^i\\\
&=&\sum_{i=0}^{\infty}\frac{(i+r-1)!}{i!(r-1)!}x^i
\end{eqnarray}
$$
最終式のシグマの中身をじっくりみてみてください、$x$を$-r$個の中から$i$個とってきているように見えますよね?これが一般化二項定理です。
まとめ
二項定理って本当にすごいですよね、いろいろな場面で出てきますし、中学や高校の時はパスカルの三角形を書いて係数をもとめていたひともおおいのではないでしょうか?
パスカルの三角形を初めて知った時の私は驚愕しました、こんな簡単な方法で式の展開が簡単に片付くのか、数学って本当に面白い学問なんだなと素直に感心しました。
このなぜパスカルの三角形で二項係数を求められるのか辺りは確か結城浩さんの数学ガールで取り上げられていた記憶があります。(記憶違いでしたら申し訳ありません)興味のある方は読んでみるといいと思います。結城浩さんの数学ガールは本当に数学の面白い部分を上手にご紹介されていると思います、簡単な導入からかなり高度な部分までをストーリーを通して学べますので読んで損はないと思います。
僕は学校教育の国語の教材にしていいんじゃないかと思っていたりしますw
一般化二項定理を理解することで負の二項分布の導出ができるようになります。次回エントリーでは負の二項分布を丸裸にしていきましょう。
このブログが統計を学んでいる方や統計検定1級取得を目指している方に少しでも情報提供になれること、このブログを通して数学・統計学を面白いと思っていただけることを願いまして本日もこのあたりで失礼します。