by nkoda

【統計検定1級対策】ガンマ関数とベータ関数の性質

目次

前書き

 今回のエントリーはガンマ関数とベータ関数についてご紹介いたします。 統計検定一級で確率分布を理解するときに必要な程度の内容です。 ガリガリ数学をするわけではないのでご安心ください、私自身そこまで数学に明るいわけではないので厳密な話はできません。  確率分布を扱う範囲のどんな場面でガンマ関数とベータ関数を利用するかを紹介しておきます。 ガンマ分布・ベータ分布という確率分布があります、名前の通りガンマ・ベータ関数が関わってきます、 それ以外にもロジステック分布、ワイブル分布、$\chi^2$分布、$t$分布、$F$分布の確率密度関数や積率母関数、期待値、分散の導出で何度も登場します。 今回のエントリでその時に困らないように押さえておきたい性質を紹介していきます。

ガンマ関数

 まずは定義を確認します。 $$\Gamma(z):=\int_{0}^{\infty}t^{z-1}e^{-t}dt \quad Re(z)>0$$ 定義は実部が正となる複素数上で定義しますが、一般の複素数にも解析接続することで拡張できるようです。 興味がある方は数学書を手に取って調べてみてください。 複素数で定義しますが統計検定一級の範囲では実数しか扱いませんのでご安心ください。 そのため、本エントリでは実数の範囲限定で話していきますが、正確には複素数上に拡張できるものもあると思われます、この辺りは詳しい参考書などでご自身で調査してください。
 ガンマ関数は階乗の一般化として知っておられる方も多いかもしれません、まずはガンマ関数で知っておきたい性質1としてこのことを記載しておきます。 $$\Gamma(z+1)=z\Gamma(z)=z!$$ 証明は簡単で定義から広義積分とロピュタルの定理から導出されます。 $$ \begin{eqnarray} \Gamma(z+1)&=&\int_{0}^{\infty}t^{z}e^{-t}dt\\\
&=&\left[-t^ze^{-t}\right]_{t=0}^{\infty}+z\int_{0}^{\infty}t^{z-1}e^{-t}dt\\\
&=&z\Gamma(z) \end{eqnarray} $$  次に押さえておきたい性質は、

  • $\Gamma(1)=\Gamma(2)=1$
  • $\Gamma\left(\frac12\right)=\sqrt{\pi}$
    具体的な数値が入った場合のガンマ関数の値となります。 $\Gamma(1)=\Gamma(2)$の証明は実際に計算してあげるだけですね。 $$ \begin{eqnarray} \Gamma(2)&=&1*\Gamma(1)=\int_0^{\infty}e^{-t}dt\\\
    &=&\left[-e^{-t}\right]_{t=0}^{\infty}=1 \end{eqnarray} $$ $\Gamma\left(\frac12\right)$の証明は置換積分をしてあげるだけです。 $$ \begin{eqnarray} \Gamma\left(\frac12\right)&=&\int_0^{\infty}t^{-1/2}e^{-t}dt\\\
    &=&\int_0^{\infty}x^{-1}e^{-x^2}2xdx\\\
    &=&2\int_0^{\infty}e^{-x^2}dx\\\
    &=&\sqrt{\pi} \end{eqnarray} $$ 第二式から第三式は$t=x^2$と置換してあげました。第四式の形はガウス積分の形ですのでガウス積分の結果を利用してあげます。1

ベータ関数

 定義を確認します。 $$B(p,q):=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}dt$$ 覚えておきたい性質は、下記の二つになります。

  • $\Gamma(p)\Gamma(q)=\Gamma(p+q)B(p,q)$
  • $B(p+1,q)=\frac{p}{p+q}B(p,q)$

まとめ

 本エントリーで出てくる性質たちを使って今後の確率分布の積率母関数などを導出していきます。 統計検定では確率分布の各値を覚えちゃうことが推奨されていますが忘れてしまった時のために導出できる力をつけておきましょうというのが本ブログの趣旨なので、当然ガンマ関数・ベータ関数のこれらの性質もしっかり理解してあげましょう。 東京図書の統計検定1級対応統計学の本でも定義と性質について必要な場面で書いてあったりしますが、少し足りないものもあるように思いますのでこのエントリでまとめて確率分布を扱う際に必要な分をまとめました。 とりあえず本エントリを見返してもらえば統計検定1級で扱う確率分布の理解には役立つようにしてありますのでご活用ください。

 このブログが統計を学んでいる方や統計検定1級取得を目指している方に少しでも情報提供になれること、このブログを通して数学・統計学を面白いと思っていただけることを願いまして本日もこのあたりで失礼します。


  1. ガウス積分はかなり有名であるし、非常に面白い解法となっています。色々な証明の仕方があるようですが私は一番発想がシンプルな極座標を利用した証明が好きです。 ↩︎